相続税はいくらから?基礎控除の計算方法と申告が必要かの判定を税理士が解説
結論からいうと、相続税がかかる(=申告が必要になる)のは、遺産総額が「基礎控除額」を超える場合です。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
(国税庁「No.4152 相続税の計算」)
たとえば相続人が妻と子2人(計3人)なら基礎控除は4,800万円。遺産の合計がこれ以下なら、相続税はかからず申告も原則不要です。この記事では、基礎控除の早見表、法定相続人の数え方、超えた場合の税額計算までを順に解説します。
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基礎控除の早見表 — 相続税は「3,600万円から」
| 法定相続人の数 | 基礎控除額(これ以下なら相続税ゼロ) |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
法定相続人が最低1人はいるため、**「相続税は遺産3,600万円から」**が最小ラインです。国税庁の統計では、相続税の課税対象になるのは亡くなった方の1割前後にとどまります。多くのご家庭では「基礎控除以下なので何もしなくてよい」が答えになります。
法定相続人の数え方
基礎控除の計算を左右するのが「法定相続人の数」です。数え方には順位のルールがあります(国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」)。
- 配偶者は常に法定相続人
- それに加えて、第1順位: 子(先に亡くなっている場合は孫)→ いなければ 第2順位: 父母などの直系尊属 → いなければ 第3順位: 兄弟姉妹 の順で相続人になります
間違えやすいポイント
- 相続放棄した人も「数」には含めます — 基礎控除の計算では、放棄がなかったものとした場合の人数を使います(No.4152)。
- 養子は無制限には数えられません — 基礎控除の計算上、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか法定相続人の数に含められません(No.4152)。
- 前婚の子・認知した子も第1順位の相続人です。戸籍をさかのぼって確認する必要があります。
「遺産総額」に何を含めるか
基礎控除と比べる遺産総額は、現金・預貯金・不動産・有価証券だけではありません。
加えるもの
- 生命保険金・死亡退職金(みなし相続財産) — ただしそれぞれ「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税枠があります(国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」)。
- 相続開始前の一定期間内に相続人が受けた贈与 — 加算対象期間は段階的に3年から7年へ延長されています。令和8年(2026年)12月31日までに相続が開始した場合は相続開始前3年以内の贈与が加算対象です(国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」)。
差し引けるもの
- 借入金などの債務
- 葬式費用
不動産は市場価格ではなく相続税評価額(土地は路線価方式など)で評価します。おおまかな判定段階では、固定資産税の課税明細書などを手がかりに概算で構いません。そもそも故人にどんな財産があるかの洗い出しには「遺産チェックリスト(登録不要・無料)」が使えます。
基礎控除を超えたら — 相続税の計算の流れ
基礎控除を超えた場合の税額は、次の順序で計算します(No.4152)。
- 遺産総額から基礎控除を引いて課税遺産総額を出す
- 課税遺産総額を法定相続分どおりに分けたと仮定して、各人ごとに下の速算表で税額を計算し、合計する(=相続税の総額)
- 相続税の総額を、実際に取得した割合で各相続人に割り振る
相続税の速算表
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | ― |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
(国税庁「No.4155 相続税の税率」)
計算例: 遺産8,000万円・相続人は妻と子2人
- 基礎控除: 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
- 課税遺産総額: 8,000万円 − 4,800万円 = 3,200万円
- 法定相続分で仮に分ける: 妻 1/2 = 1,600万円、子 各 1/4 = 800万円
- 速算表を適用: 妻 1,600万円 × 15% − 50万円 = 240万円 − 50万円 = 190万円、子 各 800万円 × 10% = 80万円
- 相続税の総額: 190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円
この350万円を、実際に取得した財産の割合で各相続人が負担します。なお、妻が取得する分には次に説明する配偶者の税額軽減が使えるため、法定相続分どおりに分けた場合、妻の納税額は0円になります。
税額が0円でも「申告は必要」なケースに注意
基礎控除を超えているのに「特例を使えば0円だから申告しなくていい」と考えるのは危険です。次の特例は、申告してはじめて適用されるものです。
- 配偶者の税額軽減 — 配偶者が実際に取得した財産のうち、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただし適用には申告が必要です(国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」)。
- 小規模宅地等の特例 — 自宅の土地(特定居住用宅地等)は、要件を満たせば330㎡まで評価額を80%減額できます。こちらも申告が要件です(国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」)。
つまり判定はこうなります。
| 状況 | 申告 | 納税 |
|---|---|---|
| 遺産総額が基礎控除以下 | 原則不要 | なし |
| 基礎控除超・特例で税額0円 | 必要 | なし |
| 基礎控除超・税額あり | 必要 | あり |
申告期限は10ヶ月 — 早めに動く
相続税の申告と納税の期限は、死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です(国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」)。特例の適用には原則として遺産分割がまとまっている必要があるため、逆算すると、財産調査と遺産分割協議書の作成は早めに始めるのが安全です。相続全体のスケジュールは「相続手続きの期限とチェックリスト完全版」にまとめています。
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よくある質問
相続税はいくらからかかりますか?
遺産総額が基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合にかかります。法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円が目安です。生命保険金や死亡退職金(非課税枠を超える部分)、相続開始前一定期間内の贈与も遺産総額に含めて判定します。
遺産が基礎控除以下なら、何もしなくてよいですか?
相続税の申告と納税は原則不要です。ただし、預貯金の解約や不動産の名義変更(相続登記・3年以内に申請する義務があります)などの相続手続き自体は必要です。また、税務署から「相続についてのお尋ね」が届いた場合は、基礎控除以下である旨を回答するのが望ましい対応です。
配偶者が全部相続すれば相続税はかからないのですか?
配偶者の税額軽減により、配偶者が取得した財産は1億6,000万円または法定相続分相当額まで相続税がかかりません。ただしこの特例は申告が要件であり、基礎控除を超える場合は税額0円でも申告が必要です。また、配偶者にすべて集中させると、次にその配偶者が亡くなったとき(二次相続)の税負担が重くなることがあるため、分け方は二次相続まで含めて検討するのがおすすめです。
自宅の評価が高くて基礎控除を超えそうです。必ず相続税がかかりますか?
要件を満たせば、小規模宅地等の特例で自宅の土地は330㎡まで評価額を80%減額できます。この特例で基礎控除以下になる場合でも申告は必要です。適用要件(配偶者・同居親族などの取得者の要件)の判断は個別性が高いため、税理士への相談をおすすめします。
生前贈与を受けていた場合はどうなりますか?
相続や遺贈で財産を取得した人が相続開始前の一定期間内に受けた暦年課税の贈与は、相続税の課税価格に加算されます。加算対象期間は段階的に3年から7年に延長されており、令和8年12月31日までに開始した相続では3年以内の贈与が対象です。支払済みの贈与税は相続税から控除されます。
出典・参考(一次情報)
- No.4152 相続税の計算(国税庁) — 基礎控除・法定相続人の数え方
- No.4155 相続税の税率(国税庁) — 速算表
- No.4132 相続人の範囲と法定相続分(国税庁)
- No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(国税庁) — 非課税枠 500万円×法定相続人の数
- No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁) — 生前贈与加算の経過措置
- No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)
- No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(国税庁)
- No.4205 相続税の申告と納税(国税庁)
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。税額の計算や特例適用の可否は個別性が高いため、具体的な判断は税理士にご相談ください。
この記事の監修者: 税理士 吉野 貴士(税理士登録番号 第110044号)
相続税申告を扱う現役の税理士が、税額・期限・法令の記載を国税庁等の一次情報と照合したうえで監修しています。 個別の税務相談は税理士にご相談ください。
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